小さな鉄路の大きな秋
〜小坂鉄道〜













待っていた。
秋空高く、揺れるススキの中で。
時折後ろを走っていく車の音。
やがてエンジンを響かせて、三つの凸がやってきた。



























待っていた。
今は乗客の来なくなった駅のはずれで。
山の向こうからホイッスルの音。
いくぶん速度を落として、タブレットを交換して行った。








































































待っていた。
使われなくなった駅を眺めて。
赤く染まる蕎麦畑に、か細くなった虫の音。
山裾を回り込んで、二つの凸が力を合わせて行った。



























待っていた。
気まぐれな秋の光に、一喜一憂しながら。
サラサラと、ザーザーと流れる渓流の音。
やがてエンジンの唸りは、川音に消されていった。



























待っていた。
湿った紅葉の甘い香りに包まれて。
山の小学校のチャイムの音。
重そうな貨車を独りで牽いて、少し遅れてやってきた。



























待っていた。
数軒が寄り添う静かな集落の庭先で。
人気のない午後に、時折過ぎる風の音。
深まりゆく秋と同じ色して、三つの凸はやってきた。

























































待っていた。
霧の濃くなる、冷たい秋雨の中で。
遠くから、遠くからいくつものホイッスルの音。
ゆっくりと行路を確かめながら、目を見開いてやってきた。










































余裕で先回りできるはずだったのに、
三脚を立てる間もなく、黒煙を吐いて突進してきた。
至近距離で響くエンジンの唸り。
ファインダーの中で煌めく一瞬の夕陽。


















次は、白い季節に・・・






           2005.10月〜11月
              Nikon F100
              NIKKOR ED 80〜200 F2.8D
              Tokina AT-X PRO 28〜70 F2.8
              Tokina AT-X 80〜400 F4〜5.6
             FUJI RVP100(←ろ、露出がぁ〜・・・)

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