2011クリスマス写真展
〜五能線四季景〜






新年早々、海を見下ろす小高い山に登ってみた。

白い大地と群青の海、厳冬のコントラストを

シベリアからの風に吹かれて眺めていた。

ハタハタで賑わう町を発車した列車の音が、

風に乗って山の上まで届いてきた。



















海岸段丘の崖に雪が吹きつける。

断崖に張り付くように敷かれた線路、

風雪をついてローカル列車は少し遅れてやってきた。

それでも暮らしを運ぶ使命感に燃えて、厳しい自然を

かいくぐりながら走る列車の前照灯はたくましい。



















サクラマスの季節、米代川の河口に夕陽が沈む。

微風にさざめく大河を渡る橋の向こうは、海。

森に降った雨は山に無数の溝を刻み、川となってやがて海へ。

天に昇った水蒸気は雲となり、滴となってまた山へ還る。

夕焼けを背に弘前からのリゾート列車がシルエットになって帰ってきた。



















新緑が日に日に山を駆け上り、緑の面積が増していく。

春紅葉。新芽の赤と黄色が若葉に混じって斜面を彩る。

穏やかな季節、暮らす人のまなざしも、旅人の視線も、

みんな優しく見えるのは、きっと優しい色の風景を見ているから。

パステルカラーの中を走る列車も、田んぼに優しく姿を映す。



















リゾートな風景にはリゾート列車がよく似合う。

旅館では食べきれないくらいの海の幸、山の幸。

微かに潮の香りを含んだ、暖かい風に乗って届く

踏切の音を聞きながら、足下のワラビを探すひととき。

贅沢な休日がここにある。



















夏の象徴、ヒマワリ。

日中の暑さも陽が傾くと和らいでくる北国の夏。

霞んでいた遠く白神の山並みも、稜線を際だたせる。

休日を楽しんで家路につく人々を乗せた、ヒマワリ色のリゾート列車が、

満開のヒマワリに見送られて駆けてゆく。



















奇岩怪石が林立する絶景海岸。

夏の始まりにはニッコウキスゲが彩りを添えていた。

観光客は皆車窓に寄り、歓声をあげていることだろう。

青い海と赤い岩の鮮やかなコントラスト。

五能線の暑い夏も、あと少し。



















秋はオレンジ色がよく似合うと思う。

朝より夕方のほうがよく似合うと思う。

柿の実、夕焼け、あかとんぼ。

水平線に近づく陽を浴びて、岩も染まる、頬も染まる。

トンネルから飛び出た列車の中でも、笑顔が染まってるかな。



















寒冷前線が通過すると、時には線路にまで波が襲いかかり、

過去の悲しい教訓から列車はしばしば運休を余儀なくされる。

来るか来ないか判らぬままに、冷たい風に吹かれていたら、

ようやく遠くに2つの目が光った。

無人駅で列車を待っている老婆の小さな姿が思い浮かんだ。



















昨日まで降り続いていた雪が止み、今朝は雪晴れ。

新雪をまとった杉はクリスマスツリー、家々は砂糖菓子。

めずらしく波静かな海の向こうには男鹿半島。

集落と小さな川をまたぐ高い鉄橋を、

雪煙をたなびかせて朝の列車が渡っていった。




















































































































2011.12.23〜26
秋田県能代市 旧料亭「金勇」にて
山岳写真家 志水哲也氏 「白神・一千万本のブナ」とのコラボレーション


大全紙版 10枚
A4版    6枚

撮影年2009〜2011
Nikon D300
AF-S NIKKOR 28-70mm F2.8 D
NIKKOR ED 80-200mm F2.8D
AF VR Zoom NIKKOR 80-400mm F4.5-5.6D
Nikon Transfer
Nikon Capture NX2




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